建設業の許可を受けるには営業所ごとに専任技術者を置かなくてはいけません。
そして、専任技術者となるためには以下のいずれかの要件を満たしていなければいけません。
- 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し一定の実務経験を有する者
- 一定の国家資格等を有する者
- 国土交通大臣から認定を受けた者
ここでは①の実務経験や②の国家資格等について詳しくお話いたします。
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実務経験の必要年数は学校教育を受けているかで変わります
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し一定の実務経験を有する者
この一定の実務経験は最大10年で、取得したい建設業の業種に関する建設工事の実務経験が10年間あれば、その業種の専任技術者の資格要件として認められます。
実務経験の必要年数は業種ごとに指定された学科を卒業していると短くなります。
- 大学又は高等専門学校の指定学科を卒業した場合
- 専修学校の専門士又は高度専門士を称するもので指定学科を卒業した場合
⇒卒業後3年以上の実務経験
- 高等学校又は中等教育学校の指定学科を卒業した場合
- 専修学校の指定学科を卒業した場合
⇒卒業後5年以上の実務経験
- 上記以外の場合
⇒10年以上の実務経験
具体的な学科と該当する建設業の種類は以下の通りです。
学科 | 該当する建設業の種類 |
土木工学※ | 土・左・と・石・屋・管・タ・鋼・筋・舗・しゅ・塗・防・絶・園・井・水・清・解 |
建築学 | 建・大・左・と・石・屋・管・タ・鋼・筋・板・ガ・塗・防・内・機・絶・園・具・水・消・清・解 |
都市工学 | 土・建・大・管・舗・ガ・内・園・水・清 |
電気工学 | 電・機・通・消 |
電気通信工学 | 電・通 |
機械工学 | 管・鋼・筋・しゅ・板・機・絶・井・具・水・消・清 |
衛生工学 | 土・管・舗・井・水・清 |
交通工学 | 土・舗・ |
林学 | 園 |
鉱山学 | 井 |
実務経験とは何か
専任技術者となるための実務経験には工事現場の単なる雑務や事務の仕事は含まれません。
実務経験とみなされるのは以下のような経験です。
- 建設工事の施工を指揮、監督した経験
- 建設工事の施工に携わった経験
- 現場監督技術者としての経験
電気工事業・消防施設工事業は原則資格が必要
電気工事業と消防施設工事業はそれぞれ電気工事法、消防法によって一部の工事を除き無資格では工事をすることができません。そのため「原則として」電気工事業と消防施設工事業は実務経験のみで専任技術者となることができないということになります。
ここからは余談ですが、「原則として」なので、例外もあり、例えば無資格でも行える一部の工事のみで必要年数の実務経験があれば認められる「余地」もあります。
自治体により考え方が異なる部分ですので、あくまでも原則は資格が必要、実務経験のみで行く場合は申請先行政庁へ事前の相談が必須です。
特定建設業許可の場合は指導監督的実務経験が必要
ここまでの話は一般建設業許可における専任技術者の要件であり、特定建設業許可を取得したいということであれば
一般建設業許可の要件+2年間以上の「指導監督的実務経験」
が必要です。
例えば「内装工事」の特定建設業許可を取得したい場合
- 〇〇大学の建築学科を卒業している
⇒3年の内装工事の実務経験 + 2年の内装工事の指導監督的実務経験 - ××高等学校の建築学科を卒業している
⇒5年の内装工事の実務経験 + 2年の内装工事の指導監督的実務経験 - 指定学科を卒業していない
⇒10年の内装工事の実務経験 + 2年の内装工事の指導監督的実務経験
なお、国家資格の2級建築施工管理技士は内装工事の一般建設業許可の専任技術者になれますが、それだけでは特定建設業許可の専任技術者にはなれません。
この場合でも一般建設業許可の要件(2級建築施工管理技士)+2年の内装工事の指導監督的実務経験で特定建設業許可の専任技術者になることが可能です。
指導監督的実務経験とは
「指導監督的実務経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、元請として工事現場
主任又は工事現場監督のような立場で工事の技術面を総合的に指導した経験です。
発注者から直接工事を請負う工事(元請負)の場合に限られ、下請としての経験は該当しません。
また請負代金も税込で4500万円以上(※)である工事に限られます。
※平成6年12月28日前の建設工事にあっては3,000万円以上のもの、昭和59年10月1日前の建設工事にあっては1,500万円以上のものであれば指導監督的実務経験の工事の対象になります。
実務経験
下請も含む建設工事の経験(事務等は除く)
指導監督的実務経験
元請4500万円以上の建設工事で現場主任、現場監督の立場で総合的に指導した経験
指定建設業
多くの業種は指導監督的実務経験によって特定建設業の専任技術者になることができますが、指定建設業(土・建・電・管・鋼・舗・園)は指導監督的実務経験で専任技術者になることはできません。
一級の国家資格・技術士資格・大臣認定が必要です。
国家資格等
資格の中には「①合格すれば専任技術者の資格要件を満たす」ものと、「②合格後実務経験を要する」ものがあります。
①合格すれば専任技術者の資格要件を満たす
例)1級土木施工管理技士
下記の業種について一般/特定建設業許可の専任技術者の資格要件として認められます。
- 土木一式工事
- とび工事
- 石工事
- 鋼構造物工事
- 舗装工事
- しゅんせつ工事
- 塗装工事
- 水道施設工事
- 解体工事(※)
※平成27年度以前の合格者は解体工事に関する1年以上の実務経験か登録解体工事講習の受講が必要です。
②合格後実務経験を要する
例)第2種電気工事士
合格後、電気工事業に関する3年以上の実務経験を積むことで一般建設業許可の専任技術者の資格要件として認められます。
さらに現在は「③技術検定の一次試験合格者を指定学科卒業者と同程度とみなす」という技術者資格要件の見直しがありました。
施工管理技士の一次試験に合格した者は1級なら大学、2級なら高校卒業と同程度とみなします。
各技術検定における対応学科は下記の通りです。
- 土木施工管理、造園施工管理 土木工学
- 建築施工管理 建築学
- 電気工事施工管理 電気工学
- 管工事施工管理 機械工学
③一次試験合格者を指定学科卒業者と同程度とみなす
例)1級土木施工管理技士の一次試験合格者
下記の業種について3年以上の実務経験を積むことで一般建設業許可の専任技術者の資格要件として認められます。
- 左官工事
- 屋根工事
- タイルレンガブロック工事
- 鉄筋工事
- 防水工事
- 熱絶縁工事
- さく井工事
- 清掃施設工事
より具体的にどの資格がどの業種の専任技術者になれるかは各自治体の手引きをご確認いただければと思います。
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ご覧のように専任技術者になりうる指定学科や資格は多岐にわたります。
ご自分の会社が一般建設業許可でよいのか、特定建設業許可が必要なのか、どの業種を取得する必要があるのか、そもそも許可は必要なのかそして必要となったら実際に専任技術者となりえるものはいるのか…
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